不妊の一般知識
一般不妊検査
自然に近い一般不妊治療では、妊娠力が落ちている原因があるかを系統的に検査しながら、妊娠を目指します。女性の体には生理周期で変化するために、必要な検査を1-2周期で適切な時期に行い、カップルにあった治療のアドバイスを行います。
基礎体温
起床時に体を動かす前の体温を婦人体温計で測定し、グラフにしたものが基礎体温表です。排卵の有無、時期を後から知るには安価で有用ですが、毎日測るのはストレスになる女性がおられます。当院では、測定をお勧めしますが、最低スクリーニングの検査が終了するまでの測定をお願いしています。携帯のアプリを利用されても構いません。生理様の出血があっても基礎体温が下がらなければ流産や子宮外妊娠などの異常を知ることができ基礎体温があると安全性が高まります。
超音波検査
初診時の超音波検査では、妊娠に影響を及ぼす子宮筋腫や卵巣嚢腫などの病気の有無をチェックします。周期ごとの超音波検査では、卵巣や子宮を観察することで、排卵の有無、排卵の時期の推定をすることができます。排卵誘発剤を使用している場合には、多胎予防のため排卵前の観察をお願いしています。
検体検査
主に血液検査で、ホルモンや感染症検査を行います。保険適応のあるもの、ないものがあります。保険での一般不妊治療では調べられる項目に制限があります。
保険で行える検査
FSH(卵胞刺激ホルモン)・LH(黄体形成ホルモン)
脳の下垂体から分泌されるホルモンで、FSHは卵を含む卵胞の成長を促すホルモン、LHは主に排卵を起こすホルモンですが、卵胞からの卵胞ホルモン(エストロゲン)の産生にも関わります。排卵のある女性では、月経中(月経開始2−7日目)に測定、排卵のない女性ではいつでも初診時に測定します。検査により卵が育つ環境、卵巣の余力、排卵のない方であればその原因を知ることができます。
エストロゲン
排卵前は、卵子を含む卵胞から分泌され卵胞の発育、成熟を評価する指標となります。低い場合には、成長がないか機能するものではないと判断します。排卵後の黄体からも産生されますが排卵後はプロゲステロンが主役です。
プロゲステロン
排卵後に黄体から分泌されるホルモンで、着床に向けての子宮内膜の準備に大切です。妊娠しないと、2週間で産生がなくなりますが、妊娠すると妊娠反応の物質;ヒト絨毛性ゴナドロトピン(hCG)により分泌が継続されます。体温を上昇させる作用から、基礎体温の高温相を作り出します。hCGともに妊娠の維持に大切です。
プロラクチン
脳の下垂体から分泌されるホルモンで、月経不順や乳汁分泌に関わります。高い場合には、下垂体のプロラクチン産生腫瘍の可能性があり紹介しての精査が必要です。
甲状腺ホルモン検査(TSH ,fT4)
TSHは脳下垂体から分泌される甲状腺を刺激するホルモン、fT4は甲状腺から分泌されるホルモンです。甲状腺ホルモン異常は、排卵障害、月経異常、流産に関わります。妊娠した場合に胎児の分の産生が必要で、甲状腺ホルモンが低い場合には児の運動発育・精神発達に影響を与える可能性があります。甲状腺機能の異常が疑われる場合には、内分泌専門内科への紹介を行っています。
テストステロン
男性ホルモンの一種で、同様の物質は卵巣だけでなく、副腎、皮下脂肪で産生されます。月経不順の原因にもなり、多嚢胞性卵巣症候群や肥満では測定が必要になることがあります。
精液検査
射精された精液を検査し、精液量、精子濃度、運動率、正常形態率などを標準と比べ男性の妊娠力を調べます。禁欲は1週間以内で予約の検査になります。
自費で行える検査
保険で一般不妊治療を開始すると、自費の検査をしてしまうとその後の治療は自費になるのが保険のルールです。自費となってしまう検査は、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、抗精子抗体などです。
そのほか安全に妊娠するために本来は開始時に、血算や生化学検査、風疹抗体が望ましい検査です。現在の妊娠力を知りたい、体の状況を知りたいだけであれば当院の自費パックをはじめに受けてみるのがいいでしょう。
クラミジア検査
クラミジアは、卵管など子宮周囲に炎症を起こし妊娠力を低下させる可能性があります。ほとんどは症状を出さない性行為感染症です。検査は、子宮頸部を擦ってクラミジアがいるかを調べるPCR検査か、クラミジアに出会ったかを調べる採血での抗体検査(IgA ,IgG)があります。当院ではスクリーニングとして頸部PCRを行っています。
通水検査
膣から子宮内に細いカテーテルを挿入し、逆流しない状態で生理食塩水を経膣超音波で観察しながら通します。卵管の通過性を主に評価するほか、水腫の有無を推定します。造影剤を使えば子宮卵管造影になります。検査後妊娠の効率が少し上がるため、早期に行います。